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新 武蔵野人文資源研究所日報

旧武蔵野人文資源研究所日報・同annex移行統合版

年末の御挨拶

何も記事をポストせぬまま、またもや当ブログも放置の危険に晒されております。年末年始のお休みにひとつ都内散歩でもしてやろうか、という向きに、六本木あたりで時間を過ごす御案内を書いておきました。いわゆる防衛機制というやつです。

以下リンク、よろしく御笑覧下さい。

世界に挑んだ7年――小田野直武と秋田蘭画@サントリー美術館【展覧会紹介】 | コラム・紹介記事

山本貴光さん『「百学連環」を読む』(三省堂)刊行、および刊行記念イベントへのお誘い

タイトル通りの案件。

詳細は以下を御覧いただきたく存じます。当方登壇致します。

 

yakumoizuru.hatenadiary.jp

 

来たる8月8日(月)19:00から、新宿西口ブックファーストにて。ぜひお運びください。

上記山本さんのブログでは何やら当方については何やらが数千倍詳しく何やらが数万倍だの胡乱なる文言が記されていますが、聞き流すに限りますぞ。言うも口幅ったいことではありますが、一応申し上げておきます。

 

わたくしは、山本さんがこの本が生まれるまでの長きに亘るプロセスにおいて何をどう考えていたかを引き出す、いまどきはファシリテーターとでもいうのでしょうか、そんなような置物ポジションでこのイヴェントに臨む構えでおります。

 しかしながら、かつて明治賢治研究会においてはさんざっぱら西先生やその他賢人連を称揚すると見せかけてひたすら失礼にも明治面白ネタの連続を会員諸賢に消費させた責任があり、そのあたりの言い訳として、今回は多少真面目に語り合う姿をお見せせねばなりますまい。

 

以下リンクはほぼ10年前、にっぽんスゴイの妙なバイアスもなく素直に「明治」という時代のとんでもなさを楽しめた時代に、この会が立ち上げられた前後の事情をブログに記していたものです。

まだこういうことをだらだら書き散らかしていた、SNSも何もない涼やかな時代でした。あったかしらん。まあそれはそれとして、記念に置いておきましょう。

2005-10-06 - 武蔵野人文資源研究所日報annex

酒井泰斗ほか『概念分析の社会学2――実践の社会的論理』

献本と言えば、こちらもご紹介せねばなりません。遅くなりました。
いや、購入しようとしていたこの書を何故いただけるのか、当初わからなかったのですね。言い訳ではないですけども。

 

が、本書「おわりに」の隅の隅に当方の名前がほぼ消えなんとする直前のような気配でわずかに掲載されており、そこに掲載されている理由から本書完成に至るまでの、編者酒井さんのある深謀遠慮(企画設計)のようなもののスケール感にはいたく感嘆したのでした。ありがとうございました。

 

内容は、こういう思考法に慣れない者にとってはなかなかに歯応えのあるものですが、ある種の知見が抽象性と具象性を兼ね備えたかたちで提示されるのが社会学というものの興味深いところで(酒井さんもそう書いている)、その手口に慣れてしまえば当代一流の書き手によってその緻密な徹底ぶりが実にダイナミックに堪能できます。


こういうものも読んで鍛錬しましょう。何かを。

『概念分析の社会学2─実践の社会的論理』(酒井泰斗・浦野 茂・前田泰樹・中村和生・小宮友根 編、2016年4月、ナカニシヤ出版)

山本貴光+吉川浩満『脳がわかれば心がわかるか 脳科学リテラシー養成講座』

著者より献本到来。

ありがとうございます。

既刊『心脳問題』(朝日出版社)の増補改訂版ですが、あれからもう10年以上が過ぎてしまったんですね。

前著の孤高の奮闘はあったのですが、この10年で、脳科学がどうたらという状況はさらに混迷を極め、おまけに近年はAIのシンギュラリティ問題がどうたらというトピックがそこに嵌入し始め、素人にはさらにこのあたりの整理がむつかしくなりつつあります。

 

そこで本書ですよ。(10年以上前にも同じ表現をした記憶あり)

 

今こそ改めて、まず本書第1章「脳情報のトリック」を読んでいただくのがよろしいかと考える次第です。とりあえず立ち読みでもいいから。そして、納得して買いましょう。お得です。飲み会で脳がどうこうという話題の折に相手を「それはカテゴリー・ミステイクだね~」等と打ち負かして優位に立つツールとしても非常に有効です。

 

★山本貴光+吉川浩満『脳がわかれば心がわかるか 脳科学リテラシー養成講座』(太田出版)

発行人・赤井茂樹、装丁造本・有山達也+山本祐衣(アリヤマデザインストア)、装画・ワタナベケンイチ、本文組版・中村大吾(éditions azert) 

脳がわかれば心がわかるか──脳科学リテラシー養成講座 (homo Viator)

脳がわかれば心がわかるか──脳科学リテラシー養成講座 (homo Viator)

 

 

春の講座、開催。

折々に講座を開催してきた弊研究所ですが、久々の炉辺談話を致します。もう春ですけど。

★4月2日(土)15:00~、東急セミナーBE 自由が丘校にて。

 

青森で三内丸山遺跡が派遣された折のような天下を揺るがすような大発見があったわけではないのですが、このところなんとなく、縄文時代の文化のありようが新たに注目されつつあるように思います。

この時代の文化像というものは、どうも定期的に刷新がなされる傾向がありますね。対照的に弥生文化の通説的な姿はごく穏当なまま推移しているのですが、縄文時代についてはじわじわと研究が進み、当節興味深いポレミックな場と化しつつあるようです。

そのあたりを整理して、雑談のネタにもなるような様々な案件を楽しくお伝えしようかと思います。どうかお誘い合わせの上、以下からお申し込み下さいませ。

 

あなたの知らない、新JOMON時代 新しい縄文時代のすがたを探る|検索結果|東急セミナーBE

2015年 感心した書籍選10点

かつては毎年これを行っておりましたが、このたびブログ統合記念に復活させてみます。昨年刊行のもの、順不同にて。特にこれらがベスト! と力むわけでもありません。非常に感心して、忘れちゃった本もいろいろあるんですが。

では、本年も宜しくお願い申し上げます。

 

カール・クラウス 闇にひとつ炬火あり (講談社学術文庫)

カール・クラウス 闇にひとつ炬火あり (講談社学術文庫)

 

 復刊ですが、未読でしたので。池内先生の代表作だと思います。

 

 

論理と歴史―東アジア仏教論理学の形成と展開

論理と歴史―東アジア仏教論理学の形成と展開

 

 仏教学における因明(論理学)の研究には宇井伯寿の『東洋の論理 空と因明』という越えられない壁のような書籍がどーんと存在しますが、どうも取り付くシマがない。私たちの時代に共通の思考法で批判的に振り返ってほしいものだ――と思っていたところに才人が彗星のように現れた印象。

 

 

古代懐疑主義入門――判断保留の十の方式 (岩波文庫)

古代懐疑主義入門――判断保留の十の方式 (岩波文庫)

 

 ぜんぜん入門じゃない。懐疑主義は悪しき相対主義じゃありませんよ、という、これは良い判断留保ですね。何を言っているかわからんと思うが、まあ読め。

 

 

殺牛・殺馬の民俗学

殺牛・殺馬の民俗学

 

 中世、近世を通じて、各地街道の宿場などには「馬捨場」等が偏在している。隠蔽された重要な民俗ですよ。

 

 

分析美学基本論文集

分析美学基本論文集

 

「美とは何か」というような問題は、古典的な美学以降にもこのような精緻な積み重ねが存在するんですね。まあ何ごともそうですが、「人それぞれじゃないですか」論みたいな論議をする前に、こういう前提を知っておいて損はないですね。少々難解ですが、ある意味現代の「アーティスト」は多少とも認識論や社会学にわたる領域に無知な、ナイーブな存在のままではもはや仕事らしい仕事もできないのが一方の事実だなあとも思います。

 

 

歩兵は攻撃する

歩兵は攻撃する

  • 作者: エルヴィン・ロンメル,田村尚也,大木毅,浜野喬士
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2015/07/31
  • メディア: 単行本
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「砂漠の狐」エルヴィン・ロンメルは 自己宣伝臭の強い本書で一躍ドイツ国防軍のスターに駆け上がりましたが、優秀だが大局観のない戦略眼に欠けるこの手の人物が書き残した、強迫的なまでに緻密な戦術的記録は滅法面白いというのがこのジャンルの定説です。そしてその種の人物はドイツに多い。まあわかりますわね。

 

 

伏字の文化史―検閲・文学・出版

伏字の文化史―検閲・文学・出版

 

 ギリギリ12月刊なのでセーフということで。

伏字とはある種、検閲者との共犯関係のもとで為される、徴候に満ちた文化行為です。そこには出版と表現の「空気」のようなものが刻印される。興趣尽きず。

 

 

テクストの擁護者たち: 近代ヨーロッパにおける人文学の誕生 (bibliotheca hermetica 叢書)

テクストの擁護者たち: 近代ヨーロッパにおける人文学の誕生 (bibliotheca hermetica 叢書)

 

 骨がある本。正直言って読みきれていません。本邦の古典におけるこのような研究が現れるのを待ちたい。間テクストと言いますかね、そういうやつです。

 

 

新版 徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

新版 徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

 

 はあ? という声が聞こえますが、「兼好法師は吉田兼好ではない」んですよ皆さん。この若き俊英は、みんな知ってる徒然草の常識を覆したんですよ。それを満を持して学会外に初めて公開したのが本書。本文の注もそれこそ注目。学問というのは発展するもんだ、とつくづく思いました。

 

 

マルセル・シュオッブ全集

マルセル・シュオッブ全集

  • 作者: マルセル・シュオッブ,大濱甫,多田智満子,宮下志朗,千葉文夫,大野多加志,尾方邦雄
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2015/06/26
  • メディア: 単行本
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 珠玉、という言葉がありますが、これかな。様々な「文学」が世に存在し、各人それぞれが「これが文学だ」という理想像のようなものを持っているのだろうと思いますが、ヴァレリー、ジイド、ジャリ、ボルヘス、ポラーニョ、澁澤龍彦がそれぞれそのようなものをシュオッブに見出しているといったようなところで、未読の方もどんなものであるのか想像できるのでは。そういうものの全集です。こういうものが出る。不思議な国ですな。

 

※番外(10点を越えましたので)

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

 

 本書についてはいわゆる「話題の本」なのですでに様々な言及があり、こんな場末でわざわざ取り上げるまでもないのですが、しかし裏ベストセラーとも言うべきこの作品は最後に挙げざるを得ないように思いますね。研究者の書いたものではありますが、専門を超えた広がりを持つ瑞々しい文体が魅力。「断片的なもの」を貫くのは、決して断片的ではない、著者の信念のようなもの。